箱庭の朗読 - 青空文庫

　むかしむかし、あるところに、ひとりの商人がいました。この人は、たいへんなお金持で、町の大通りをすっかりと、そのうえ小さな横町よこちょうまでも、銀貨でぎっしりと、しきつめることができるくらい、お金を持っていました。けれども、そんなことはしませんでした。もっ

　いまからずっとずっとむかしのこと、ひとりの皇帝がいました。皇帝は、あたらしい、きれいな着物がなによりも好きでした。持っているお金をのこらず着物に使って、いつもいつも、きれいに着かざっていました。皇帝は、自分のあたらしい着物を人に見せたいと思うときのほかは

むかし、むかし、小さい女の子がありました

コウノトリの話

　曙あけぼのの色がほのかに東の空を染めて、間もなくその日の最初の太陽の光が、はるかな海面を錫箔すずはくのように輝かせた。洋上はまだ薄暗く、空と海の境もはっきりしなかったが、とにかく、海には朝が来ていた。 　鴎かもめが一羽、そのヨットの上空で、ゆるやかに翼を�

わたしはそのころ世田谷警察署の刑事でした。自殺したのは管内のＳ町に住む南田収一みなみだしゅういちという三十八才の男です。妙な話ですが、この南田という男は自分の妻に失恋して自殺したのです。

ピアニストが事故にあった話

髪の長い娘

寒い寒い大晦日。マッチを売りに来る少女の話

大きな国の老人兵と小さな国の青年兵